ジキルハイド症候群
「初めて見たよ。蒼真のあの慌てっぷり」
いいものを見せてもらったと那祁は楽しそうだ。
そして、那祁は、あたしの隣にいる彼女をその目に映す。
「あれ?女のコだ」
「あ、えっと……」
那祁に指を差されて彼女は戸惑っている。
「恵里ちゃん、お友達?」
「さっき会った。」
「さっき?はじめまして?」
「うん。自殺願望者」
「………は?」
首を傾ける那祁に、あたしの制服を掴む彼女。
彼女に目を向けると、僅かに顔が赤い。
「酷いです、恵里さん」
「?あたしは、事実を言っただけよ?」
「もう、死ぬのは止めました」
彼女の言葉に瞬きを繰り返す。
「止めるの?」
「はい。逃げない」
「……なら、いいんじゃない?」
死なないならそれに越したことはないから。