ジキルハイド症候群
「それに、友達になりたいの」
「友達?」
「恵里さんと」
ニコニコと笑う彼女からは、もう暗い雰囲気は見られなかった。
(友達……)
そういえば、あたし友達なんていなかったなとボンヤリ思う。
話す人はいるけど皆上辺だけだった。
心を許せる、友達はいなかった。
怖いから、信じるのが。
「ね?」
「………」
どうしよう。
彼女は、あたしをあたしと見てくれた。
なら、信じてもいい?
「恵里」
蒼真があたしの手を握ってくれる。
大丈夫だと言われているような気がした。
「………よろしくね、自殺願望者」
「っあたしの名前は、亜理砂だからね?!」
自殺願望者じゃないから!!と必死に弁解する彼女―――亜理砂にあたしは、笑みを溢した。