この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
祐くんイイ大人のクセして性格悪い――と、言ってやりたいけども。
「ホントに記憶に無い?」
「アハハ…、そ、そうかもですねー…」
いつもならば“うるさい”と言える間柄なのに、今日はソレが足枷らしい。
オマケに私も社会人のクセに、なんて意味不明な言葉遣いをしているのか…。
「のん?」
「へ、あー…はは」
どう話していいのか分からず、かと言って逃げる術も見当たらないとは。
知られているから余計に、恥と馬鹿の“両上塗り”もいいところだ・・・
「昨夜は、あんなに欲しがったクセに」
「ちょ、ちょっと…っ、言わないでよ…!」
ムリヤリに浮かべ続けてきた、乾いた笑いがとうとう途切れ始めた頃。
「ベッドの中の方が可愛いじゃん、鳴き声もねぇ…」
「ッ・・・」
ジッと真っ黒な瞳が探るように、冷や汗タラタラな私をニヤリと一笑する。