この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
数日前の浮気発覚事件と違って、身体がフリーズして動けない。
その場に留まる虚しさから逃げたくて、踵を返す事が精一杯とはバカだ…。
「やっぱり間に合わなかった!?」
「…え?あー…そうなんです。すみません」
「ヤバい事しちゃったわ…」
トボトボ4階にある-ange-に戻ると、利奈さんが私の手の内にあるストールを見て落胆する。
「で、でも!知り合いの知り合いみたいだから…、渡して貰います」
「え?知り合いの知り合い?」
「あ…、姉の幼馴染みの知り合いみたいなんで。
さっき会話をしてて、気づいたんですけど…」
意味が分からないといった様子の彼女に、慌てながら取り繕いをしてしまう。
「へぇ、それなら良かった!
望未ちゃん、悪いけど頼むね」
「はい、任せて下さい」
中途半端な説明でも、役員である柚ちゃんを引き合いに出したせいだろう。
どうにかなりそうな状況に納得し、利奈さんは安堵の表情を見せてくれた。