昼下がりの当番表
閉館時間まで、あと1時間。
続く脱力感を無理に追いやって、やよいは閉館準備の前にとカウンター周辺の整理を始めた。
知る人ぞ知るカウンターの中は、様々な情報であふれている。
卒業生が使用していた昔のカード、貸出記録を作るための貸し出し一覧表。そして、カード作成の手助けをするための名簿。
それらを眺めながら行うカウンターの整理は意外と面白いものだ。

「ま、利用者が少ないからこの名簿もあんまり役に立たないんだけどね。はは。」

貸出一覧表に目立つ名前と言えば、自分自身である千歳ひばり、同程度の頻度を誇る利用者と言える睦月佑哉。
後は、同じ学年にいる男子生徒。

そして。

「神無月先輩、年末からあんまり来てないな。」

ひとつ上の先輩の名前。
名前を口に出すだけで、ぎゅと胸が軋むのは、若さ故、の想いの名残だろうか。
憧れというには強すぎる気持ちがくすぶる度、脳裏に浮かぶのは白いシャツの後ろ姿。
…そして、その隣にいつもいる綺麗な横顔が印象に残っている女の先輩。

哀しみは肺にたまるのだろうか。
鮮明すぎる光景を思い浮かべるたび、唇からは哀しみの色が移りそうな溜息が重くこぼれる。

いやいや、落ち着け自分。
今は、委員の仕事に集中するんだ。

無理に雑念を、飛ばすように、ひばりはすっかり熱中しながらその作業に没頭していった。
だからだろう。
気づかなかったのだ。図書室の前で、直立不動で立ち止まる少年に。

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