⁂ダイヤモンド⁂


秋山さんの視線はあたしに向けられたままだったけど、一生懸命、気づかないふりをした。


「はい、どうぞ」


ウイスキーを作り終え、グラスをふくとそっとコースターの上に乗せる。


「アハハハハッ!!やっぱこの店では未来が1番だっ!!」


笑えなかった……

そして、秋山さんを恐ろしく感じた。


“いい人”


客の中で、あたしはいろいろ振り分ける。

その中で1番か2番を争うくらいのいい人。


5年間、あたしの週6の出勤に対して、秋山さんは週4~5の割合で来てくれる。


どれだけお金を使ってくれたのかなんて、計算できないくらいだ。


それでも、あたしを一度たりとも誘ったことはない。


同伴アフターも求めることなんてなく、大人しく帰って行く。


“いいお客さん……”

きっと、誰もが思ってることだろう。



そんな秋さんを、あたしは今日初めて恐ろしく感じていた。

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