微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)

俺が母の立場だったら、即日が無理でも前と同じ会社で、出来れば同じスタッフを雇う。

見ず知らずの他人を自分の留守中に家に入れるなんて、母は警戒心に欠けていると言うか……

自分の親ながら、何とも複雑な気分になる。

それを言うと……

「だって家には甲太朗がいるから大丈夫でしょ?」

「……はあ」

思わず、ため息が漏れる。

俺が心配で、お手伝いさんを雇ったと手紙に書いてあった気がするんだけど……

あんた俺の保護者だという自覚あるのか、と言いたくなる。

無いんだろうな……

俺も、母親に甘えるような年じゃないけど。

だけど、そのお陰で芳野さん達と出会えた訳だし、結果オーライ、と無理矢理納得しておこう……


「でも甲太朗、元気そうでよかったわ」


元気……じゃない。

風邪引いてるし……

母さんが、気づくはずないけど。

「……。母さんは、まだ帰って来る気無いの?」

「……うん」

声が暗く、どこか陰りがあるように感じる。

もしかして、例の男と何かあったのだろうか。


< 57 / 59 >

この作品をシェア

pagetop