水晶玉は恋模様

恋溺れ

次の日、私はなるべく普段どおりに学校に行った。
自分の恋愛は成就しないと言われた後だったので、
流石に気が重かった。
教室に入り、ちらりと高沢を盗み見る。
それだけなのに、とても息苦しかった。

「牡丹、大丈夫?」

圭子に声をかけられて、私はようやく我に帰る。
気付くと、圭子の隣に望が立って、2人で心配そうな顔をしている。

「私達には何もして上げられないけど……。牡丹、本気なんだね。」

圭子がそう呟いた。
望が少し恥かしそうに俯く。

「あの……昨日『顔だけで判断するなんて』みたいなこと言ってゴメン。」

その表情は、普段判断を間違えない望の、
私が始めてみる間違いを認める顔だった。

「ううん、大丈夫。それに、私の恋は叶わないから。」

私は少しセンチメタルになって言った。
圭子が驚きの表情を浮かべる。

「えっ、でも恋に関しては牡丹猛烈じゃん。何で諦めんの?」

私は黙ってしまった。
この2人は占いとか、信じてるのかな。
占い師の事を言うかどうかは迷ったけど、
親友なんだし、打ち明ける事にした。

「あのね、すごく良く当たる占い師に合ったの……。」

私は、最近起こった全ての事を話した。
すべて話し終わった後、何故か私は泣きそうになっていた。
であった仲間達の優しさを思い出したからかもしれない。
当たる占いが存在した事への感動かもしれない。
それとも――。

私の気持ちをよそに、圭子と望は笑い転げていた。
2人とも、超・現実主義者なのだ。

「何、それー。確かに牡丹の名前が分かったのは不思議だけどさ、
そんなの盗聴に決まってるって。最近多いんだよ、盗聴。」

こう言って涙目になって笑っているのは圭子。
望は口にこそ出さなかったものの、内心では私を馬鹿にしているようだった。

「もうっ、2人ともなによっ。全然分かってないんだから~。」

毎週水曜日に行われる占いレッスンに参加する事を決めていた私は、
流石にムッとしながら言った。
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