あひるの仔に天使の羽根を
 
後悔先に立たず。


「あの"生き神様"も男食ってたよな」


煌が話に乗っかってしまった。


「だけど食べることがイコール力になるならよ、力を得ているのはあの"生き神様"だけってなわけ? あの瘴気は凄えけどよ、食うこと以外に害なさそうな気がするんだけど」


話にのるな、阿呆タレ。


叫びたいのは山々だけれど、その話題を提供したのはあたしだ。


「恐らく"生き神様"は、屍食教典儀の集大成で作られたものではなく、残滓だろう」


櫂がそう言った。


「残滓?」


由香ちゃんの問いに、櫂は怜悧な目を光らせる。


「失敗作、とも言う。失敗作は失敗作なりに、本来の目的とは違う形に役立っているんだろうけれどな」


あたしは首を傾げる。


「どういう意味?」


「死体処理兼、用心棒」


気持ち悪くなった。



「じゃあ屍食教典儀の本来の活用方法は?」


由香ちゃんの問いに、笑った櫂の顔は不敵だった。



「緋狭さんは3つの意思があると言った。1つは各務翁。2つはレグ。3つ目は……セツナだ」


また刹那だ。


「屍食教典儀をもたらしたのはレグだが、活用に踏み切ったのは各務翁だ。彼には"約束の地(カナン)"を作るに至る目的があったという。

ヒントは恐らく旭の手帳にある」


櫂の眼差しは、パソコンに向いていて。


「見つけたんだ、レグが探していた天使……有翼人種を。

食べることで永遠をもたらす、不死身の肉体を与える人種をね」


玲くんの言葉に、櫂は口角を吊り上げて呼応した。


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