あひるの仔に天使の羽根を

綺麗だと――

純粋に思える…鮮やかな橙色は。


彼の輪郭を拡張するように光放ち…すっと身体に取り込まれた。


それからの馬鹿蜜柑の動きは変わった。


早い。


偃月刀を持つ右腕を始め、全ての動きが別人のように速くて。


元々、煌の腕環は緋狭様のもの。


見掛けでは想像出来ない程の、尋常ではない重さを持つもので。


まるでそれの"手枷"から自由になったかのような軽やかな動き。


相手の動きを先回りして、自分にとってどう動くのが得策か…観察している余裕すら見える。


窺い見る緋狭様の顔は実に満足気で。


特に驚いた表情もない処から、煌の持つ潜在力というものを判っていて…あえて重い手枷を与えて力を抑圧させていたのだろうか。


鍛錬、修行。


怠けていてもこれだけの潜在能力は、その記憶無くともかつての"制裁者(アリス)"の№2の実力も頷けるもので、私の矜持をいやに刺激した。


やれば出来るのに、なぜやらない!!?


怒鳴りたくて仕方が無い。


恵まれた体躯と運動神経、格闘センスに潜在能力。


更に――


「此の分なら…来るな。あいつが…」


緋狭様の薄い笑いと同時に、場は更に紅蓮に燃えて。



「金翅鳥(ガルーダ)!!」



その名の存在は、噂に聞いたことがある。


最強と誉れ高い紅皇の相棒。


悪意や邪悪なものを炎で食らい尽すという神鳥。


それが…なぜ煌の中から。


そして――

司狼に勝ってしまったのだ。


誰が見ても、圧勝で。

< 1,164 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop