あひるの仔に天使の羽根を
 

だけど――

馬鹿蜜柑には、やはりオチがあり。


金翅鳥(ガルーダ)は煌の言うことを聞かず、帰らないらしい。

焦って頭を抱える姿を見ていると、少し私の心が晴れてくる。


やっぱり、馬鹿だ、こいつは。


出したものすら片付けられないなんて。


救いようのない、ガキすぎる、馬鹿だ。


緋狭様は馬鹿蜜柑との歴然とした力の差を見せつけて、金翅鳥(ガルーダ)を帰還させた。


落ち込み…そして目を輝かせた様子から、金翅鳥(ガルーダ)を操れる未来を夢見て、どうせ櫂様や玲様と対等に立てるかも知れないなどと、儚い望みをもったのだろう。


本当にこの男は、調子に乗らせるとどこまでも調子に乗る。


何て不安定な橙色。


だけど見過ごすには強烈過ぎる橙色。


だから、緋狭様も目が離せないのか。


こんなに馬鹿なのに、私にですら…例え一瞬であろうと、"愚鈍"を忘れさせるなんて…それはもう天性の詐術があるとしか言い様がなく。


ふと……思った。


紅皇に師事する順序から言えば、馬鹿蜜柑は兄弟子だ。



ああ――

私はこんな男の"弟"弟子になるのだろうか。



本当に――


うんざりして、頭が痛くなってきた。


緋狭様に頼んで、絶対この男と一緒の鍛錬は止めて貰おう。


腹立たしい雑念に囚われるに決まっている。




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