あひるの仔に天使の羽根を
問答無用の姫の奪還。
だけどそこには爽快感も達成感もなく。
まるで夜盗のような、味の悪さ。
「久遠~ッッッ!!!」
まるで恋人に別れを惜しむような、芹霞の声に。
「……うっ」
僕は苦しい心臓に絶えきれず、階段で膝をつき前のめりになってしまう。
「玲様!!?」
桜が伸ばしたその手を、僕は唇を噛んで笑いながら拒んだ。
駄目だ。
今僕が倒れては駄目なんだ。
芹霞は白皇と賭けをしたんだ。
壊さないといけない。
今度は邪悪の樹の魔方陣を。
僕が――必要なんだ。
「……櫂、用意は出来ている。行こう」
「ああ……だけどお前…」
その心配げな顔に、
「やらなきゃならないだろう!!?」
僕は怒鳴った。
興奮に、また早い心臓の鼓動が大きな波を打って。
苦しさを通り越して…激痛になり…息が出来ない。