あひるの仔に天使の羽根を
 

女の手には双月牙。


獰猛な肉食獣の瞳に囚われて、あたしの体は震えて動かず。


――ぎゃははははは。


同じ金の瞳なのに。



「……陽斗……」


そう呟いた時、



「陽斗……?」



僅かに女の顔が曇り、


だからあたしは



――ガツンッ!!!



その頭に思い切り頭突きをして逃げ出した。


決して美しくない闘い方。


あたしは平和な庶民だ。


どんなにあたしの実姉が極度格闘狂(フリーク)であろうと、どんなにあたしの周囲が特異な環境に居て闘い慣れていようと、どんなに敵を蹴散らす強さをもっていようとも、あたしだけはただの平々凡々の女で。


闘い方なんて知らない。


どんなに無様な格好であろうと、



「この女ッ!!!」



形振り構っていられない。



女は怒り、後方からあたしの髪を鷲掴む。


闘い慣れしているはずの女も、形振り構っていない。


何とも原始的な不格好な闘い方だ。


まるで子供の大喧嘩だ。

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