あひるの仔に天使の羽根を

ふ、う――。


ようやく、息が出来るようになった時。


「な、何よ……あれ……」


そんな言葉しかあたしからは出てこなくて。


玲くんさえも強ばった顔をしていて。


「ねえ、"生き神様"に祈りをって言ったよね?」


そう少女に聞いていた。


「なあ、玲。先刻の男食う化け物だけどよ、

多分それが"生き神様"」



「……あれが何だか、君は知ってる?」



少女は玲くんに言った。



「"生き神様"の御使いの……天使……」


「天使!?」


煌がひっくり返った声を出す。


「首刎ねたあれの何処が天使だ!? どちらかと言えば悪魔だろうが!!!」


煌の迫力に押されて、少女は泣き出しそうになっていて、あたしは煌を諫める。


「人の命を刈り取る……だから天使です。悪魔ではありえません」


それでも少女は、頑なにそう言い張っていて。



「……煌」


玲くんは言った。


「恐らく――概念が違うんだ、此処は」


「あ!?」


「この地で天使というものは、僕達で言う悪魔なんだよ」


あたしはふと思い出す。


――"てんし"っていうものみたいです。


だとしたら、旭と月は?





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