あひるの仔に天使の羽根を


「好きなんだ……」



俺は芹霞を抱き締めたまま、身体を傾けていく。


芹霞に拒まれた同じ場所で、芹霞が離れないよう覆いかぶさる。



絡められた両手の指。


俺を受け入れるように微笑む可愛い芹霞。



「芹霞、好きだ……」


譫言のように告げる俺。


伝われ、俺の想い伝われ。



「"櫂、あたしも……"」


弱い声が聞こえて、俺は思わず声にならぬ声を漏らした。


ああ、どれ程待ち望んでいたことか。


俺の目から一筋涙が零れ落ちる。


歓喜の涙だった。



「芹霞……俺」


「"ねえ、あたしは芹霞じゃないわ。須臾よ?"」


そんな咎めるような甘い声に導かれ、

俺の目の前にいる、欲しくて堪らない女は須臾だと再認識する。


馬鹿な俺。


浮かれるあまり動転し、他の女の名前を呼んでしまうなんて。


お前以外の女、どうでもいいのに。


そして俺は――


「好きだ、須臾……。

俺の永遠をやる。

だから……俺から離れるな」


満足げな微笑みを見せる、俺の此の世で一番愛しい女に――


口付けた。
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