あひるの仔に天使の羽根を

・異変 桜Side

 桜Side
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「うわっ!!! 突然目を開けるなよ、葉山!!!」


私が目覚めた時、丁度遠坂由香が私の額のタオルを変える処だった。


余程驚いたらしく、彼女は後方に仰け反り尻餅をついて、私に寄越す筈の濡れたタオルを顔面に被っていた。


ああ、そんなことより、


「櫂様は!!?」


私は勢いよく上体を起こし、


「……っ!!!」


あまりの激痛にそのまま前に倒れ込む。



意識が薄れるくらいの痛みに、浅い呼吸をするしかない。



「無理するんじゃないよッ!!! 全く、目が覚める度にそんなんじゃ、折角呑んだばかりの薬も益々効かなくなっちゃうんだからね!!?」


飲んだばかり…。


鎮痛剤の持続効果は、ないということか。


このままベッドで寝ているわけにはいかない。


馬鹿蜜柑でもあるまいし、私が櫂様の足を引っ張るわけにはいかないのだ。


私は歯を食いしばり起き上がる。


「駄目だってば!!!」


ずきん。


私の身体が、私の意思に反した過剰な反応を示す。


「櫂様……」


再び蹲った私の口から血がぽたぽたと滴り、遠坂由香に気づかれないよう、片手で口を拭った。


「紫堂は今席外してるよ。先刻言い聞かせたから、1人で神崎や師匠を迎えに行くような無茶はしてないはずだから、すぐに戻ってくるよ」


すぐに戻る……。


だけどなんだろう、この嫌な予感は。


私は紫堂の力はないけれど、直感は外れたことはない。


故に櫂様も玲様も私の直感をアテにすることも多いくらいだ。


その直感が告げているのだ。


櫂様が危ないと。


櫂様の異変の予兆を感じ取っている。


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