ご主人様はお医者様
驚きとうれしさで、胸が苦しくなる。
うれしくても涙は出るんだ――よね。
「ありがとう」って抱きつきたい気分なのに、やっぱり“先生”だ。こんな日の朝でもきちんと仕事に行っちゃうんだもんね。
リビングに出て行くと、朝食の準備がされている。
私は顔を洗ってテーブルに着いた。
その脇には見覚えのあるリングケースが置かれていた。
これ――…
以前、クリーニングに出したコートのポケットから出てきたものと同じ。
私、てっきりお見合い相手に渡す婚約指輪だと思ってたんだ……。
そっか、
そうだったんだ。
それから私は夕方まで掃除や洗濯をして、お礼とお詫び?を兼ねて豪勢な夕食を準備した。