ご主人様はお医者様


朝は早めに起きて先にマンションを出る彬を見送った。


忘れ物がないか心配する私をみて、彬はおかしそうに笑っていた。



「……大丈夫だよ、小春」


「だって……心配で」


「いや、ごめん。ありがとう」




そういいながら玄関で彬は私にキスをする。


唇が離れると、私の体をギュッと抱きしめてくれた。


これから病院で会えるんだけど、こんな風に恋人同士として見送れるのは今だけ・・・



「……行ってくる」


「うん。メール、毎日するね」



「わかった」そういって彬は玄関のドアを閉めた。



――パタン・・・



ドアが閉まると家の中が急にシンと静まったように感じる。




「……寂しくなんか、ないもん」




独り言を言いながら、朝食の片づけをして私もマンションを出た。






< 247 / 304 >

この作品をシェア

pagetop