ご主人様はお医者様
朝は早めに起きて先にマンションを出る彬を見送った。
忘れ物がないか心配する私をみて、彬はおかしそうに笑っていた。
「……大丈夫だよ、小春」
「だって……心配で」
「いや、ごめん。ありがとう」
そういいながら玄関で彬は私にキスをする。
唇が離れると、私の体をギュッと抱きしめてくれた。
これから病院で会えるんだけど、こんな風に恋人同士として見送れるのは今だけ・・・
「……行ってくる」
「うん。メール、毎日するね」
「わかった」そういって彬は玄関のドアを閉めた。
――パタン・・・
ドアが閉まると家の中が急にシンと静まったように感じる。
「……寂しくなんか、ないもん」
独り言を言いながら、朝食の片づけをして私もマンションを出た。