ご主人様はお医者様
病院に着いた私は仕事を始める。
いつもそうだけど、午前中はまるで戦場のような忙しさ。
そんな中でも彬の姿を探すんだけど、今日に限ってまったく見つけられなかった。
気が付いたら、もう12時を回っていた。
休憩に上がる準備をしていると、先輩たちの話が聞こえてくる。
私は思わず作業の手を止める。
「さっき、2人で出かけて行ったみたいだよ」
どうやら彬は病院を出発してしまったみたいだ。
「いいなぁ。カナダ!!」
「まるで新婚旅行みたいじゃない!?」
「「ほんとーーっ」」
新婚旅行か――…そんな言葉に心がチクリと痛む。