逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


男子たちの言うとおりだ。



橘くんがあたしを好きなわけない。



「橘も学年一可愛い女子からコクられて振るとか、ホントもったいないよなぁ~」

「俺が彼女いなかったら、絶対に付き合うわ」

「あーそれ。彼女に言いつけてやろー」

「おまえ、それマジでやめろ」



橘くん、1組の女の子から告白されてたんだ。



あんなに可愛い子から告白されて……橘くんは振ったんだ。



告白するつもりなんて最初からなかったけど、



あたしの想いなんて、絶対に叶わないことを改めて思い知らされた。



告白してないのに、振られた気分……。



「でもさー、橘なんか前より元気なくね?」

「そうか?」



橘くんが元気ない……?



あたし自分のことばっかりで、全然気づかなかった。



「俺たちの前じゃ元気に見せてっけど、授業中とかひとりの時って、暗いっつーか、浮かない顔してること多い」

「そりゃやっぱ、落ち込んでる咲下と一緒にいるからじゃね?」

「あーかもな。暗いヤツと一緒にいると、こっちまで暗くなってくるもんなぁ」



あたしと一緒にいるせいで、橘くんに暗い顔させちゃってたんだ……。



あたしのせいで……。



「おまえらさー、本人いないとこで勝手なこと言ってんなよなー」

「なんだよぉ。くぼっちー」

「本人たちにしか、わかんねーことだってあるかもしんないだろ?」

「なにムキになってんだよ?くぼっちらしくねーじゃん」



あたしは教室には戻らずに、階段の方に向かって廊下を歩いてく。



橘くんの笑顔が好きだった。



それなのに……その笑顔、あたしが奪おうとしてたんだ。
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