逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「ハァ、ハァ……っ」



階段を駆け上り、屋上のドアの前でしゃがみ込んだ。



なんで……?



なんで涙が溢れてくるんだろう……。



屋上のドアにもたれかかり、上を向いた。



涙がこぼれ落ちないように。



上を向く。



それでも涙は、静かに頬を伝って落ちてゆく――。



あたしはやっと気づいた。



自分の本当の気持ち。



修学旅行で、同じ部屋だった女子たちと恋バナをしたときに感じた違和感も。



女子たちはみんな、好きな人に告白して、付き合いたいと言っていた。



でもあたしは違った。



橘くんのことが好き。



でも告白したいとか、付き合いたいとか、そんなふうにはあの時も思ってなかった。



それは、あたしが橘くんのことを好きっていう気持ちを抱えてるだけで精一杯だからだと、そう思ってた。



あの時、あたしもいつかはみんなと同じように、



告白したいとか、付き合いたいとか思うようになるのかもって思ってたけど、そうじゃない。



そんなのは全部、自分への言い訳にすぎなかった。



「本当はあたし……怖かったんだ……」



自分にとって、大切な人ができることが。



怖かったんだ。
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