逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「怖いの……」
「凜ちゃん……。何が怖いん?」
たとえば、橘くんの気持ちを自分の都合のいいように考えることだってできる。
悲しくて、どうしようもなかったとき、朝まで一緒にいてくれて、手を握ってくれたことも。
お母さんの病院に、あたしを毎日迎えに来てくれたことも。
あたしが教室にいないと、校舎のどこかにひとりでいるあたしを見つけて一緒にいてくれたことも。
あの街を離れるとき、あたしを必死に追いかけてきてくれたことも。
遠いこの街まで、あたしに逢いにきてくれたことも……。
橘くんの行動をすべて自分の都合のいいように考えたら、
もしかしたら、橘くんはあたしのことを特別に想ってくれてるのかもしれないって……。
そう思うこともできる。
でもそれは違うって、すぐに頭の中からその考えを消してきた。
橘くんは、優しい人。だからあたしを気にかけてくれただけ。
そう思う方がラクだった。
あたしの大切な人は、あたしのそばから必ずいなくなる。
あたしの人生は、いままでそういう人生だった。
だからもう求めない。
もう何も失いたくない。
求めなければ失わない。何も怖くない。
だから、大切な人を手に入れてはいけない。