逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
それに、前の学校でクラスの男子たちが話していた言葉がずっと忘れられない。
橘くんは、あたしみたいな人をほっとけないって。優しいから、あたしと一緒にいてくれてるって。
あたしと一緒にいるようになって、橘くんが元気ないって、暗くなったって……。
あたしのせいで、橘くんが男子たちに陰でそんなふうに言われてるのが、何より悲しかった。つらかった。
あたしは橘くんを笑顔にはできない。幸せにはできない。
あたしは、ひとりで生きていくって決めた。
だからあの街を離れるとき、彼が握ってくれた手を自分から離した。
昨日、彼が逢いにきてくれたのは、あたしを心配して来てくれただけ。
“いつかまた……逢えるよな?”
あの言葉を守ろうとして、あたしに逢いに来てくれたんだと、そう何度も自分に言い聞かせた。
「陽葵ちゃん、あたし……橘くんに一度も好きだなんて言われたことないよ?」
「凜ちゃんは言うた?橘くんに好きって……」
あたしは首を横に振って、うつむく。
「想い合っとるのに気持ちを伝えんのは、何か理由があるんやね?それでええの?」
「うん……」
この世界でいちばん悲しいことは、なんだろう。
あたしは思う。
大切な人を失うことだと。
だから、心の中でそっと。
彼を想い続けるだけでいい……。
「橘くんはね……あたしの心の支えなの……」