逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「橘のバイト先のペンションて、修学旅行で泊まったホテルの近く?」
「そーだな。そんなに遠く離れてはいないよ」
バイト先は、海のすぐそばにあるペンションだった。
休憩時間になって、近くの砂浜に行くのが俺は好きだった。
砂浜に立つと、心地いい潮風に包まれた。
夜空には星屑がちりばめられ、
その星たちを優しく見守るかのように月が浮かんでいて。
その幻想的な景色は、修学旅行の夜のことを俺に思い出させた。
「毎日バイトだったの?休みナシ?」
「いや、たまに休みはあったよ。休みの日に“体験ダイビング”っていうライセンスがなくても海に潜れるやつやったり」
きれいな景色は夜だけじゃない。
昼間は鮮やかな青い海が美しく、果てしない遠くの向こうで空と繋がっているように見えた。
透明度が高い海の中は、たくさんの魚が泳いでいて、そこはまるで別世界。
いつかまた、海の中に潜ってみたい。
ダイビングのライセンスを取りたいって思うほど、感動的な経験をした。
「なんだよ~夏休み超満喫してんじゃん」
「思い切って行ってみてよかったよ。いい出会いもあったしな」
「いい出会いっ!?なになに?どんな女の子?可愛いーのっ?」
呆れる俺は、くぼっちの足を軽く蹴った。
「アホ」
「え~?女の子じゃないの?てっきり新しい恋でも始まったのかと……」
俺は目を細めて、くぼっちを見る。
「睨むなよぉ……」