逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



「だからぁ……旅行じゃなくて、リゾートバイトだって電話で言っただろ?」



夏休み前にケータイでバイトを探していたら、何気なく目に留まったリゾートバイト特集。



夏休みなどの長期の休みを利用して、ホテルや旅館、ペンションなどの全国のリゾート施設で寮に住み込み働くというもの。



俺はそれに申し込み、夏休みに入ってからすぐに沖縄へと向かい、



この夏休み中ずっと、沖縄のあるペンションに住み込みでバイトをしていた。



こっちに帰ってきたのは、夏休みが終わる2日前。



「てかさぁ、なんで沖縄?」



「え?」



「沖縄も確かにいい場所だけどさぁ、修学旅行でも行ったじゃん。他になかったの?」



「まぁ、いろいろあったけど……別にいいだろ?」



何かに夢中になって、忙しく過ごして。



咲下のことを忘れたいって思った。



でも全国各地のリゾートバイト募集の中から、沖縄という場所を選んだのは、



やっぱり心のどこかで……



修学旅行で咲下と見たあの星空を、もう一度見たいっていう思いがあったからだと思う。



忘れたいなんて言いながらも、結局は……咲下に繋がってる。



「俺も誘ってくれればよかったのに~。おまえひとりで行くなんてさ」



「だって……せっかくの夏休みに彼女と1ヶ月以上も会えなくなってもよかったのか?」



俺が真剣な顔で聞くと、くぼっちは腕を組んで考えこむ。



「んー、それは……ムリだわ」



「ふっ。だろっ?」



そうは言っても、きっと……。



前もってくぼっちに話していたら、くぼっちは絶対に俺と一緒に行くって言うに違いなかった。



くぼっちは、そういうやつ。



だから俺は、黙って行くことに決めたんだ。
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