逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「卒業したらここで働かせてくださいって冗談でオーナーに言ったら、快くOKしてくれてさ」



「え?ちょ、待てって……おまえ、本気で言ってんの?」



驚いて大きく目を見開いたくぼっちに、俺は真剣な顔でうなずく。



「卒業したら沖縄のペンションに住み込みで働くってこと?」



「そう。俺の進路決定」



「ちょ、落ちつけよ。よく考えて決めろって」



思いがけない話だったのか、くぼっちはかなり動揺している様子だ。



「こっちに帰ってからもう一度よく考えてみて、どうするか決まったら連絡くれってオーナーに言われたけど、もう俺の中では決まってる」



夏休み前までは、こんなふうになるなんて想像もつかなかった。



正直言って、逃げるように沖縄に向かったようなものだった。



だけど、そこで気づけたことはあった。



新たな出逢いを重ねて、人は大人になってくのだと。
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