逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
俺は自転車をすっ飛ばして、吉野が待つコンビニへと向かった。
「あっ」
コンビニの店内にいた吉野を見つけた。
俺の姿を見るなり、吉野は俺の腕に勢いよくしがみついた。
「遅くなってごめんな?」
「ううん」
20代くらいの怪しい若い男がひとり、雑誌を立ち読みをしているフリをしてこっちをチラチラと見ていた。
俺がその男をジロッと睨みつけると、男は視線を手元の本にうつした。
「行こ」
そう俺が言うと、吉野は俺の腕にしがみついたまま小さく頷く。
吉野と一緒にコンビニを出た。
外から振り返って店内を見ると、さっきの男がこっちを見ていた。
「なんなんだよ、アイツ……。吉野ん家まで送ってくよ。後ろ乗って」
「ありがと……橘くん」
俺は吉野を後ろに乗せて、自転車を走らせた。
「この道、真っ直ぐでいいの?」
「うん……次の信号を右に……」
「了解」
「……ごめんね。来てくれてありがとぉ。橘くんが来てくれなかったら……」
後ろから聞こえた吉野の弱々しい声。
「いいよ。アイツにずっと後つけられてたの?」
俺は自転車をこぎながら、前を向いたまま吉野と話す。
「うん。家まで走って帰ろうかとも思ったんだけど、家を知られるのも怖いし……」
「さっきの男って、吉野の知ってるヤツ?」
「ううん。全然知らない人」
「なんか怪しい目つきだったよな。怖かっただろ?大丈夫か?」
「……ん……大丈夫……」
そう小さな声で答えた吉野は、後ろから俺の服をぎゅっと掴んだ。