逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「――吉野?」
電話に出たけど、吉野は黙ったままだ。
「もしもし?」
“……橘くん”
電話の向こうから聞こえたのは、吉野の小さな声。
「どした?」
“……すぐに来て”
「なんかあったのか?」
吉野の様子が少しおかしいことに気づく。
「いまどこ?……ん、わかった。すぐ行く」
そう言って俺は、電話を切った。
ベランダのドアを開けて部屋の中に入ると、ちょうど玄関が開き、親父が家に帰ってきたところだった。
「おかえり」
「ただいま。出掛けるのか?」
「うん、ちょっと行ってくる」
俺は急いで家を出て、吉野の元に向かった。