逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
それから数十分後、父親がひとりで家に戻ってきた。
あたしは階段をゆっくり下りて、玄関で話している父親と彼女を見つめる。
「もう少しだけ探してみよう。それでも見つからなかったら警察に捜索願いを出そうか」
「えぇ……そうね……」
あたしはふたりが話している横を通り過ぎ、靴を履いて玄関のドアを開けようとする。
「凜、どこに行くんだ?」
後ろから父親に腕を掴まれた。
「あたしも探してくる」
そう言ってあたしは、父親の手を振り切って家を飛び出した。
あたしのせいで……。
あたしのせいで……のえるがいなくなった……。
幼くて、まだひとりじゃ何もできない年頃なのに。
いったい、どこに行ったの……?
どうして家を出て行ったの……?
あたしが冷たくしたから……?
「ハァ、ハァ……のえるーっ」
必死に走って、のえるの名前を叫ぶ。
「のえるーっ」
涙ぐむあたしは、腕でゴシゴシと目をこする。
「すみません、このぐらいの背の幼い女の子、見かけませんでしたか?」
あたしは通りすがりの人に尋ねたりしながら辺りを探しまわるけど、のえるらしき女の子を見たという人は誰もいなかった。
家からだいぶ遠いけれど、あたしは駅の近くまで探しにいった。
ふと電信柱に貼ってある紙が目に入る。
それは、ここ最近この辺りで幼い女の子が声をかけられたり、連れ去られそうになったという不審者の情報だった。
「まさか……ちがう……よね……?」
のえる……お願い。無事でいて……。