逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「ハァ、ハァ……っ」
息を切らしながら砂浜に着いた。
辺りや遠くの方まで見まわす。
夜の砂浜でも人影くらいは、なんとか見える。
だけど砂浜には、すでに誰もいなかった。
その場にたたずむ俺は、手で胸元をさすり、息を整える。
さっきのは見間違いだったんだ。
やっぱり俺がバルコニーから見た人影は、愛空ちゃんだったのかもしれない。
咲下の声が聞こえたような気がしたのも、きっと気のせい。
これでやっと、ハッキリした。
最初からわかっていたはず。
咲下がいないことも。
もう咲下には逢えないことも。
全部わかってるはずなのに……。
バカだな……俺。
ぎゅっと拳を握りしめた。