逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
動かないでくれ……。
そこにいて。
上を見上げていた咲下は、ゆっくりと前を向いた。
「咲下ぁ―――っ」
何度も叫んだ。
叫び続ける俺の声に、彼女は1度も振り返らなかった。
それ以上、行っちゃダメだ。
行くな。
ダメだ……行かないで。
力の限り必死に叫んだ。
「やめろぉ―――っ」
あと少し。
あと、もう少し。
走っていく俺は、彼女の背中に向かって手を伸ばす。
あと少し――。
彼女の背中に触れることのない俺の指先。
届かない……手……。
その瞬間、彼女は崖から飛び降りた――。