TENDRE POISON ~優しい毒~
次の日、カーテンの閉めていない窓から朝日が侵入するまで、僕は目を覚まさなかった。
強い光に、目を開けると鬼頭が僕の腕の中でこちらをじっと見ていた。
「おはよ。もう朝ですよ~」
鬼頭は微笑みながら、チュッと僕の額にキスをする。
「お……おはよ」
寝起きの一瞬、状況が読めなかった。
目をこすっているうちに昨晩の出来事が序々にフラッシュバックして記憶を鮮明に映し出す。
そっか……
昨日(というか今日?)鬼頭と……
それを考えると、顔が熱くなっていくのを感じる。
照れ隠しに、鬼頭をぎゅーと、抱きしめた。
「なぁに?」クスクス笑いながらも鬼頭も僕の背中に手を回してきた。
こんなに幸せなときって今まであったかな?
それなりに女の子と付き合ってはいたし、同棲もしたことがある。
だけどこんな風に好きな人が近くにいて幸せに感じたことは初めてだ。
この幸せを手放したくないよ。
切に願った。
でもどうしてかな?
このとき僕はこの幸せが長く続かないことを何となく悟っていたんだ。
僕は繋いだ手が解けないよう、必死に力を入れていた。