僕の死に方
 藤見正信がナイフを取り出す仕草は、驚くほどに無造作だった。
 彼を苛めていた人間達も、一瞬呆気に取られ、何が起こっているのか解っていないようだ。
「……なん、だよ……テメ、しまえよ、それ」
 リーダー格の声は、明らかに狼狽していた。
 藤見正信の握るナイフの刃は、彼に向いていたのだから。
「…………」
 自分の手の中にあるナイフを見つめ、藤見正信は微動だにしなかった。
 黙って佇んでいる姿は、朝からの落ち着き無い様子とは違い、ひどく落ち着いているように見えた。

 伏せていた顔を上げ、藤見正信が、歯を食いしばってリーダー格を睨みつける。
「なっ、なんだよ。冗談やめろよ。お、おい! 誰か!」
 彼の仲間には、身を挺してまで助けようとする人間などいない。
 ただ、無様に狼狽しているだけだ。

 そして、藤見正信はナイフを振り上げた瞬間、雄叫びを上げた。
「う、あ! あ、あ、あ、あ!」
 叫び声と共に、迫っていくナイフ。

 そこに――

 僕は、飛び出した。
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