クリスティアナ
「えっ?今なんて?」


クリスがリリアに聞き返す。



「お支度をして陛下の執務室に行かなければなりません」



「どうして陛下の執務室に行かなければいけない?」



クリスは不機嫌そうに眉根を寄せた。



「陛下はお忙しい方ですから、さあさ、お支度をいたしましょう」



リリアの腕には真紅のドレスがかけられている。



先日、沙羅とリリアが選んだドレスだ。



あの時、クリスは不機嫌なまま、人形のようにされるままになっていた。



だからどんなドレスが作られたかも知らなかった。



「このままでいい」



シンプルな飾り気のないブルーのドレスを着ていた。



「いいえ、それは部屋着ですから、陛下に失礼ですわ さっ、お着替えしましょう」



真紅のドレスをイスの背にかけると、部屋着を脱がせるためにクリスの背後に回った。



仕方なく脱がされていると、クリスはハッとなった。



「じ、自分でやる」



キースにつけられた胸の赤いものを思い出したのだ。



こんなのリリアに見られたくない。



「クリス様、部屋着はご自分で着られますがこのドレスは無理ですわ」



「……」



「カミラ、お化粧の用意を」



クリスの反応を気にせずに、リリアは飲み物を持って入ってきたカミラに言う。




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