左手のエース
――東亮太だった。




「びっくりした…、屋上にいたの?」



タバコの煙も、彼のタバコから出ているものだった。





「レギュラー下りてもいい…か。

2人して綺麗事ばっか言いあってて飽きねぇ?」





あたしは彼の笑った顔を
この時初めて見た。

…人をバカにしたような笑顔。





「綺麗事で悪かったわね。

てゆうか盗み聞きとか辞めてよ。」


コイツ、なんか嫌い…。





あたしはぷいっと背を向け、
その場を離れようとしたが、

階段を1段降りるたびに
怒りがふつふつと湧いてくる。




立ち止まってもう一度彼の方を見た。




「……あたしは…



チビだし…体格も運動部向きじゃないけど、


レギュラーとれるだけの
努力はしてきた。



諦めて部活辞めるあなたみたいな根性なしに
とやかく言われたくない。」






彼はタバコを口に加えたまま、
真っすぐあたしの目を見ていた。





そして、何も言わずに
ふーっと煙を吐き出す。

白い煙が、彼の意外なほど澄んでいる瞳を見えなくした。
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