凶漢−ﾃﾞｽﾍﾟﾗｰﾄﾞ

11…決着

負けを認めた竜治に、ヤンは特に勝ち誇ったような態度は取らなかった。

寧ろ、途中迄勝負に加わっていた自分の手下達が騒ぐのを窘めるだけの余裕を見せた。

「残念ですが、勝負は時の運と昔から言いますから…」

「あのぉ…」

ヤンが喋り終わらないうちに、ディーラーの彼女が、片言の日本語で、

「わたしも、フォーカードです…」

一瞬、場が静まり返った。

彼女がオープンした三枚は全てがＫ。表の四枚目のＫと併せてフォーカード。

それ迄以上の大歓声が店内を覆った。

彼女は顔を興奮で赤らめ、卓上のチップを全てチップボックスに戻していった。

ヤンの手下が口々にイカサマだと喚く。

ヤンは暫く椅子から動こうとしなかった。

「勝負は時の運と言いますから…」

竜治の言葉に、ヤンは薄笑いを浮かべたまま、

「一生分の運を使い切ってしまったかも知れませんよ…」

と言った。

喚き続ける手下を従え、ヤンは店を出ようとした。

大勢のギャラリー達が見守る中、

「負けの不足分は、明日にでも届けさせます。」

そう言って出て行った。
< 74 / 169 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop