凶漢−デスペラード
第四章…狼達の終焉

1…変化

カジノ・ロワイヤルの成功で、竜治に早々と2号店の話しが舞い込んだ。

今度の場所は駅の南口側。

国道246号線…通称青山通りと呼ばれる道筋から少しばかりマークシティに向かって入った所にその物件はあった。

周囲は小さな飲食店が多く、深夜は正直それ程人通りは多くないが、サラリーマンの利用率は高い場所だ。

その物件は、元々レストランだった店舗で、上の階がビジネスホテルになっている。

尤も、ビジネスホテルとは名ばかりで、実際は風俗業者御用達のホテルである。

竜治の元に話しを持ち掛けて来た人間も、実はこのビルのオーナーで、澤村との繋がりも浅くない。

広さは、百軒店の店とそれ程変わらない。

「話しは有り難いですが、先立つものが…」

「私が直接銀行に掛け合いますから、その辺は御心配無く。」

結局、話しはあっと言う間に決まった。

四月にオープンさせる為に、かなりの突貫工事だったが、ギリギリ間に合った。

オープンの前夜祭も、前回同様、多額の宣伝費を掛けた。

デモンストレーションを兼ねたルーレットやバカラに興じる来賓に混じり、意外な人間がやって来た。

久美子だった。

売り上げの報告等で、澤村のマンションではほぼ毎日のように顔を合わせてるが、それ以外の場所では偶然スターバックスで会った日以来だ。

シックな紺色のドレスに、所々ラインストーンが散りばめられ、身体の角度が変わる度にそれが眩しく光る。

さり気無く彼女自身の身体の線を表し、見る者に久美子の裸身を想像させずにはおかない。

柑橘系の香水が鼻くうを擽り、薄いストールから透けて見える肌が、こんなにも白かったかと、竜治は思った。

「お店に行く前に顔出しちゃった。」

言い方が、子供っぽくて、何と無く微笑んでしまった。

「義兄は来てるの?」

と久美子が聞いて来た。

「いえ、先程帰られました。」

「忙しそうだから、すぐに行くから、私の事は気にしなくてもいいのよ。どんな感じかちょっと見たかっただけだから。」

「お店にはすぐ?」

「ううん、少し位の時間なら…ねえ、何処かでお茶でも…せっかくだから、やっぱりお酒の方がいいかな?」

久美子の誘いは魅惑的だった。
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