ネコ専務シリーズ
ネコ画伯
ネコ専務の兄に、日本の抽象画家として
はそこそこ名の知れた、「ネコ画伯」が
いる。

わけの分からない、くにゃくにゃした線
を書き、その上に自分の肉球をカラフル
にスタンプしていく「肉球派」の、代表
的画家である。

ある日、ネコ専務がネコ画伯の家を訪ね
ると、今日のアンラッキーカラーは白だ、
お前は白猫だから帰れ、と言われて
しまった。自分も白猫のくせにである。

そこでネコ専務が日を改めてまた来て
みると、ネコ画伯はちょうどこれから絵
を描こうとしていたところだった。
ちょうどよかった、お前、これかぶれ、
と渡されたのは、墨汁である。

ネコ専務は嫌がったが、この兄に逆らっ
てもムダである。ネコ専務は墨汁を頭
からぶっかけられ、大きな紙の上に
ベタッと寝転がされて、魚拓みたいに
型を取られてしまった。

後日、この作品「タイトル:天空の調和」
は3000万円で売れたのだが、ネコ
画伯は、お前は1割な、といって、
モデルのネコ専務には300万円しか
くれなかった。

ネコ専務は、いや、これは山分けでしょ、
と抗議に行ったのだが、今度は赤と青と
黄のペンキを頭からぶっかけられ、また
猫拓を取られてしまった。

この作品「タイトル:友情」は2600
万円で売れたのだが、ネコ画伯はまた、
お前は1割な、といって、ネコ専務には
260万円しかくれなかったという。

              おしまい

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