スゴロク!

1マス目

私の名前は深海結姫(みうみ ゆいひめ)。
しがない3流マイナー雑誌の記者をしてるの。
この業界では、業界内で有名になると異名というかあだ名というか、通り名みたいなものが付けられる。
長嶋監督が"ミスター"って呼ばれてるみたいな感じでね。
それで、私は"マイガール"って呼ばれてる。
彼女って意味なんだけど、誰か特定の彼女じゃなくて、みんなの彼女って意味を込めて呼ばれてるから、あんまり好きじゃないけど…浸透しちゃってるから仕方ないかな。
仕事柄、大勢の色んな人達と話すのと、私自身が惚れっぽいのも手伝って、一般的な女の子よりちょっとだけ恋愛経験が多いのが理由。

「よう!マイガール!調子はどーだいッ!?」
不自然なくらいの大声で話しかけてきたのは編集長の鬼崎(きざき)さん。
「…編集長…挨拶のたんびに胸触るのやめて下さい!」
このセクハラ親父、黙って座ってればそこそこシブイおじ様なんだけど、TPO関係なく連発するセクハラのせいでかなりマイナスイメージ…。
「まぁまぁ深海さん。減るもんじゃないですし、いいじゃないですか胸の2つや3つ」
「私の胸は2つです!」
穏和な笑顔でボケてくるのは、自称"平和主義"の槙原(まきはら)さん。
見た目も口調ものんびり系だけど、実は凄腕のカメラマン。

まだ他にもメンバーは居るんだけど、だいたいこの2人と私がメインでやってる。
まぁ事務所が狭いからこのくらいが丁度いいんだけどね。
それにしてもこの事務所…すっごく汚い…。汚し担当の編集長と、散らかし担当の槙原さん。私がいくら片付けても追いつかないわ。
放っとくと異臭が漂いそうなゴミだけでも片付けとこっかな。

「さてマイガール、掃除なんか後にしてよぉ、例の件、頼むぜ」
「…編集長、まずこの手をどけて下さい…」私はおしりから編集長の手を払い除けながら、ヒゲ面を睨みつけた。
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