ドキドキしてる
連いて来ていると思って、後ろを見ずに歩いていたソラは、ふと気配を感じない事に気づいて足を止めた。
後ろを振り返るとやっぱり居ない。
(あれ…??消えた…)
「急に現れたと思ったら、急に消えるし…?変なヤツ…やっぱり。」
そう呟きながらまたトボトボと歩きだしたソラの頬に突然、ヒヤッとした冷たくて固い物が当たった。
「ひゃっ!」
思わず声が出た。
「これっ酔い冷まし~っ!どうぞ!」
笑顔でこちらに缶コーヒーを差し出す長岡が目の前にいた。
「もう…とっくに酔いなんて冷めてるっつーの…」
真顔で言い返す。
「なんかゴメン…ただ、センセイに会いたかっただけなんだよね」
「……。」
(そんなこと急に言われても…なんで…?)
「なんで、私に会いたいの??…変なヤツって思ってまたからかいに来たの?」
「そんなんじゃないよっ、…俺、いつもセンセイのこと見てたよ?」
ドキっとした。久しぶりに感じる気持ちだった。
(どうしよう…なんなんだろ…なんて言えばいいの…?本気で言ってるのかな…)
「気づかなかった?」
「いや…なんとなく、よく見てるなとは思ってたけど…」
(まさか、変だから観察されてたとか??)
「俺、センセイのことが気になるんだよねいつも。」
昼間、屋上で拾われたものはマッチだけではなかったようだ。
ソラは、ココロまで拾われてしまった気分だった。