カベの向こうの女の子
メールは特に返さずに放置していた
何度か電話があったけど、それも無視した
何を企んでいるんだろう
俺を落として春菜から離れさせるつもりなのか
あれが現実なのか、ロングヘアーが何をしたいのか、を知りたい気持ちもあった
だけど、迂闊には行動できない自分もいる
聞いたって俺の望むような返事が返ってくるとは、到底思えない
触らぬ神にたたりなしというし、無視が一番だろうと俺は思った
俺は寒さに肩をすくませて、上着のポケットに手を突っ込む
少ししてから春菜が現れた
「この前はごめんね。テストやばくって…」
春菜はいつもの道を歩き始めながら、言った
「いや、全然。テストできた?」
「おかげさまで、なんとか!」
春菜は笑って下唇をかんだ
茶目っ気のある笑顔に、俺は心底癒された
俺は本当に春菜が好きだと改めて感じる
「なら、良かったよ。それで赤点でもとってたら、俺怒るよ」
「ふふっ、やだぁ。」