カベの向こうの女の子


それから駅員はパソコンでなにやら調べてから、奥に行った



やっぱり。


俺はそう思って、上手くいったことを確信した






でも、これから春菜が来るかもしれないことを考えると、嬉しさより不安な気持ちが雲みたいに心を覆った



嫌でも悪い想像をしてしまう



ひどく軽蔑した目で見られるかもしれない



そのときは本当に心が折れると思う



何も言えないで帰るかもしれない



そんなこと考えていると、奥から駅員が戻ってきて俺に言った



「ありがとうございました。持ち主に連絡がついたので、今から取りにくるそうです」



俺はそれを聞いて、駅員に心臓の音が聞こえたんじゃないかってくらい強く心臓が鼓動した




いよいよか



改札から離れて、でもそこが見える位置に立った



日が暮れかけて、風が少し冷たく感じた



春菜はどんな服装でどんな表情でどんな歩調で来るんだろうか



何度も違うパターンを想像してみる


どう声をかければいいだろう



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