カベの向こうの女の子
明るく?
いやそれは不自然
深刻そうな表情も
暗い表情もだめだ
かと言って、無表情は、どうなんだろう
春菜はきっと驚くだろう
目をまんまるく見開いて
多分あの事がなくて、前みたいに俺を好いてくれてたなら、驚いてから満面の笑みを見せてくれる
でも、あの事があったから、驚いて…そのあとは…
自然に自分の顔が強張っているのに、俺は気づいた
だから顔を横にブンブン振って、気をとりなおす
どうなるかわからないけど、とにかく謝って少しでも関係が修復するように、何か言わなきゃな
俺は考え事に耽っていたから、時間が随分過ぎていたことに気づかなかった
たんたんたん…と、軽快に階段を上る音が、人が混雑するなか、何故だか聞こえた
俺は頭を上げて、改札付近を見た
ちょうどそこに駆け寄る、ショートパンツにブラウスの少女は、春菜だった
さらに鼓動が早くなる
その場にうずくまるくらいに、胸が苦しい