カベの向こうの女の子


「俺、春菜を好きでいていい?」



自分からこんなこと言うなんて、思ってもみなかった


こんなドラマみたいなキザな台詞を言ってる自分に驚いた



だけど、純粋に確認しかった



春菜に



春菜は俺の方は見なかった


ただ街灯に照らされた頬が、いつもより赤いのに気がついた



俺は黙っている春菜の肩に手を回して、自分のほうへ引き寄せた



ふわりといい香りが、微かにした



春菜は驚いたようだった


細い体がびくっと動いたのがわかった



でも突き放されたりはしなかった



春菜は俺の服を掴んで、微かに首を縦にふった



駅を行き交う人の視線は感じたけど、気にならなかった


まるで春菜と俺だけの世界みたいに感じた


俺は少し笑って、腕の力を強めたんだ






あの時のこと散々後悔したし、決して正しい行動をしたわけじゃなかった



現に春菜を傷つけて苦しめた



だけど、馬鹿で良かった


今なら開き直れる



あの時、春菜を誘拐して良かった



あれがなければ、春菜と知り合えることすらできなかったんだから



でもきっと馬鹿じゃなくても



どのみち誘拐したかもな、なんて思う



天才的に頭が良かったとしても


真面目だったとしても



俺が俺なら



春菜の魅力に敵うはずないんだから






...おわり

< 219 / 219 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

崩壊ハイティーン
ねはる/著

総文字数/10,970

恋愛(その他)23ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
芦名幸多(アシナコウタ)と 芦名奏多(アシナカナタ) 彼らは一卵性の双子である 在学中の高校の中では ダントツの知名度を誇っている その理由は ・まず双子であること ・イケメンであること (ゆえにモテること) ・性格がいいこと ・成績がいいこと ・運動ができること このようなまさに、 少女漫画からそのまま出てきたような双子、だからである 彼らの印象は 爽やか・誠実・優しい・明るい・理想・聡明・かっこいい・歯が白い・どっちかと恋人になりたい・あわよくば2人とも…(以下省略) と、まさに非の打ち所のない信じられないような好感度 そんな奴には、影があるに決まってる… って? そう思った人は、多分漫画の読みすぎです ただし、兄・幸多に至ってはね 弟・奏多はというと…
シャッター
ねはる/著

総文字数/21,179

恋愛(その他)33ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
それは暑い暑い夏の日に突風のように現れた カメラ越しの君の目にはだれがどう写るかな 鮮やかなひまわりも 晴天の青空も 田舎の線路も 君の心の中も 君にしかわからないものを わかろうとしたら罰があたるよね でも やっぱりちょっとは期待する そんな罰も払い除けて、相変わらず君が笑いかけてくれること シャッター
先生が神様じゃなくなった日
ねはる/著

総文字数/1

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
未編集

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop