カベの向こうの女の子
「んー、車で1時間くらいのとこ…。全然行けてなかったの」
俺は彼女の顔を横目に軽くため息がでた
そのくそ正直どうにかしてほしい
できれば遊園地とか言ってほしかった
せめて映画とか
「連れてってやるよ」
俺が少しがっかりしたのとは反対に春菜は笑った
「本当に!?ありがとう」
それを見ると、どうせ2人で出かけるのには変わりないんだからいいやと思えてきた
むしろ胸の奥が熱くなってワクワクしてきた
それから行く日にちを決めて、あっさりと約束をこぎつけた
なんにせよ、デートだと思っていいんだよな
思ったもん勝ちだよな
俺がなんでこんなふうに春菜に会いたがったり出かけたがったりするのか、春菜はなんで理由に気づかないんだろう
春菜の能天気な笑顔を見ると、それを言って困らせてやりたい気もするし、いつまでも能天気な笑顔を見ていたい気もする
喜ばせたいとか困らせたいとか俺の感情は複雑なようだ
いつもどっちつかずでふらふらしてる
だけど結局は、実はシンプルなものかもしれない
俺は春菜の感情が全部、自分が原因であればいいと思ってる
ただそれだけなんだ
結局はただのエゴでしかない
春菜の感情が俺に支配されることなんて叶うわけないのに、いつも自分のどこかでそれを強く切望してたりするわけだ