カベの向こうの女の子

信頼と信頼



アパートの階段のすぐ傍にいる人がいたが、誰だかわからなかった



ただこっちをじっと見ているので、俺は顔を歪める



知り合いにあんなにスーツが似合う大人の男なんていないし…




相手の勘違いだろう、と思った



俺には関係ない人だと思って、通りすぎようとした




「どうも」



目の前まできてそう声をかけられたもんだから、内心驚いた



俺は思わず眉間にシワがより、いかにも怪訝そうに見てしまう



男は俺より少し背が高くて、年齢は20代後半といったところ



愛想のよさそうな笑みを浮かべている


男は俺を見て自分を指さす


「覚えてないかな?」



「?さぁ…」



男は苦笑いをした



「藤原の一応…先生なんだけど」



そう言われて一瞬なんのことかと思った



春菜が藤原って名字なのも一瞬思い出せなかった






しばらくして、俺は女子高生に校門の前で囲まれたこととそこにいた教師を思い出した



春菜の教師を見たのは、あのときだけだ



そうだ、確かこんな感じだった



「ああ…。思い出した」



思い出したからといって、顔の筋肉は緩まなかった

強張ったままだ



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