カベの向こうの女の子
男は喉の奥をククッと鳴らして笑った
「なんでこんな教師が自分の目の前にいるんだ、って顔してるな」
まったくそのように俺は思ってた
その教師は笑うと目が垂れて、人当たりの良さそうな雰囲気がある
たぶんきっと、生徒に人気があるだろう
特に女子生徒に
自然に素を見せてしまうような、なにか委ねてしまいたくなる、そんな雰囲気がある
きっと教師に向いている善人タイプだ
ふとある記憶が空に浮かぶ気まぐれな雲みたいに、俺の頭に漂ってきた
他愛もないただの女子高生の噂話だ
『副部長と先生、絶対できてるからー』
あの噂話の当事者はこいつかな…
今までの感じ、この教師がテニス部の顧問みたいだし
「で、理由は?あいつのこと?」
俺は頭でそんなことを考えながら、聞いた
教師は急に真顔になった
真顔でもやや目は垂れていて、しゅっとしている
「あいつ…?」
「髪長い…、あの、春菜とよくいる…」
俺はそう説明した
気づけばロングヘアーの苗字、知らなかった