堕ちていく二人
殺意


玲子は桂司と別れる決意を秘めて、滋賀県のマンションに帰ってきた。

玄関のドアを開けると裕也が大声を出して泣いていた。

ベビーシッターは桂司が帰らせてしまいいなかった。

裕也の顔には玲子と同じように、桂司に傷つけられたアザが残っていた。

桂司は玲子のいない間に、遂に息子の裕也まで激しい暴力を振るってしまったのだった。

玲子の中で大きな音をたてて崩れ落ちるものがあった。

そして、裕也の顔のアザを見た瞬間に、押さえていた怒りは限界点を遥かに通り過ぎていた。

桂司は風呂に入っていた。

玲子は迷わずキッチンへ向かい包丁を握りしめた。

玲子がバスル−ムのドアをそっと開けると、桂司は頭を洗っている最中でシャワーでシャンプーの泡を流しているところだった。


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