初恋
「櫻木先輩…」


自分の枯れたような声に驚きながら、先輩の声に安心した



「声枯れてるけど大丈夫?…今近くにいるんだけどさ、会えるかな?」


誰かにすがりつきたい気分だったから、丁度よかった



「私も逢いたいと思ってました。どこにいるんですか?」



知らないうちに歩いていた



「コンビニの近くだよ。お家行っても大丈夫?」


私が歩いていた方向と真逆の位置に先輩はいた



くるりと振り返り、


「今、私外にいて…家はちょっと色々あって…今そちらに向かいます」



家の前をもう一度通り過ぎた


「花優愛!…何してんの!」



よ過ぎるタイミングで母が出てきた



少し走ったらスリッパが脱げて裸足になった


母は後ろから走ってくる


走り慣れていないせいで、母に追いつかれそうになる



先輩の電話はさっき切ってしまった



もう少し、もう少し


先輩に会える
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