初恋
死ぬのではないかという位に呼吸するのが辛かった



先輩が私に気付いた



先輩は手を振りかけてやめた



こちらに向かって走ってきた



近付くスピードを見ると、やっぱり男の人なんだなぁと実感した



少しだけ安心した瞬間、首元を後ろから掴まれた


「逃げてんじゃねぇよ」

低く、やけに静かな母の声が私に響いた



強く掴み直された手首は血が止まるのではないかと感じるくらいだった



普通の人よりも筋力が無い事を恨んだ



「花優愛ちゃん」



いつもの優しい声が今日は荒い息遣いに混じっていた


振り向いた瞬間、先輩はもう片方の手首を掴んだ


「どちら様ですか、…帰って貰えます?今忙しいので」


睨みながら母は先輩に言った



「花優愛ちゃんの友達です。…お母さんなのにそんなに強い力で掴むんですか」



先輩は普通に喋った



「これぐらい強くないです。帰って貰えます?」

更に苛立ちが目に見えて分かるようになった母は、私の手首にまた力を加えた



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